Posts from 7月 2009

2009.07.30 木曜日

ひかりもかげもない

light red light, originally uploaded by ixao_AGP.

朝の空を見上げて、軽そうな雲が流れるのを見つけて、その雲の端っこが緩やかに滲んでゆくのを見つめる。それが好きで、そんな時間が幸せで、それだけでいいのにって思う。
道端の赤い花のその赤色がただでさえ素敵なのに、光を受けてとても印象的にぼくの眼に映る。そんなことに感動して、嬉しくて、少し口元が緩む。
ここ数日、あちこちにクモの巣が増えている。細い細い糸がチラチラと光を受けてまぶしい。風が吹くと素直に揺れる。巣は破れることなく、ゆらゆらきらきらとなびくだけだ。階段の途中で足を止めて見入ってしまう。ずっと眺めていたい気分になる。
そんなふとした瞬間やちょっとした時間があればそれだけでいいはずなのに、どうしてこうも気分が晴れなかったり考えることが内向きになってしまったり、ときどき少し哀しくなったりするんだろう。それが分からないのがまた哀しいのだ。

2009.07.30 木曜日

3×2


3×2, originally uploaded by ixao_AGP.

だいたいの日において、人は何かを知る。

2009.07.28 火曜日

欲しいもの


fork, originally uploaded by ixao_AGP.

フォークが欲しい。
4年くらい前に買ったフォークを使っている。
たしか、100円くらいだった気がする。
安物のせいか、どの皿とも相性がよくない。
少しでも皿と擦れるとすごくいやな音が出てしまう。
ああ、フォークが欲しい。

2009.07.26 日曜日

the needfuls


nos, originally uploaded by ixao_AGP.

机の上が乱れている。封を開けていない郵便物、ラジオで聴いた曲名のメモ、撮り終えたフィルム、クリップ、青のペンが2本、二度と会わない人の名刺、まだまだ挙げるとキリがない。とにかく散らかっている。
物をたくさん持つのは苦手で、できるかぎり身の回りには必要なものだけを揃えるようにしている。一生住むわけではない部屋に不要なものを溜め込むのは、合理的じゃないと思う。そもそも、たかだか1Kの部屋なのに、どこに何があるのか把握できないほどの物がある状態ってあまり想像できない。まだしばらくは小さな部屋に一人で暮らしていく日々が続くのだろうから、物を増やしたくないし、増やすことはできない。だから長く好んで使えるものが必要になる。
就職して4ヶ月が過ぎようとしている。この社員寮に住んで4ヶ月になろうとしている。部屋のために買い足したものといえば、キッチン用のマットくらいだろうか。いまでも部屋の半分のスペースに寝床とデスクを置いているだけで、残りの半分は空白になっている。殺風景だと言わざるを得ないのだけど、これには「さっさと寮を出るつもりだから、この部屋に投資したくない」という理由がある。寮って性に合わない。すごく安いけど。
そんな殺風景な部屋にも、少しくらいは飾り気が欲しいものだ。だから壁には、好きな文章をプリントアウトしたものが1枚と、人に譲ってもらった好きな写真が1枚飾ってある。今はこれで十分だと思っている。
さあ、いよいよ(早くも)来月、寮を出ることにした。これまでの退寮者の最短入寮期間は6ヶ月だったらしい。一番我慢のない新人である。

2009.07.20 月曜日

三日間、ぼくは少しだけ

少しだけ梅雨の余韻が感じられる。拭いきれない湿っぽさ。枯れ落ちきれないあじさいの花。夏の姿は見えるのだけれど、まだ触れることはできずにいる。そんな季節。
この3連休、ゆったりした気分だった。いつもの休日と同じように土曜日の朝に掃除や洗濯を済ませたあと、さて残りの時間をどんな風に過ごそうかと考えていた。生温い風に当たりながら、ぼんやりと外を眺めながら。
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土曜日の夜は友人と食事をした。久しぶりの新宿はやっぱりややこしくて迷ってしまった。そしてやはり背の高いビル、近くで見上げるには高すぎるビルの多さが少し嫌になった。でも、もちろん、食事は楽しいものだった。いつ会っても「変わらず」に「変わってゆく」その人に会うことは、ぼくにとってとても大切なことだ。つまりとても大切な人なのだ。それもまた変わらないことなのだろう。
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日曜日。物件探し。素敵な所を見つけた。築31年という古物件だけど、窓からの見晴らしが良くて静か。そして和室。だけど寿命が2年だそうだ。33歳の夏に姿を消す運命。そんな運命。
帰り道、旧友を食事に誘った。単なる愚痴だったり、確たる想いだったり、いろいろこぼしながらカレーを食べた。そして少しだけ酒を飲み、音楽を聴いた。たぶん彼はぼくが一番たくさん写真に撮っている友人だ。中学生から高校生、そして大学生への変貌を記録してきた。大学の卒業式へ向かう電車内で撮った彼の写真は、実はぼくのお気に入りだったりする。この春から同じく上京し、働き始めた。入社式の直前、彼の新居で、彼のアゴに茂っていたヒゲをそり落とす儀式に同席し、写真を撮った。そういえば高校の卒業式の日にも、男子トイレで彼が同じようにヒゲをそり落とす写真を撮ったのだった。いつか写真をまとめてプレゼントしてやろうと思う。
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そして今日、月曜日。起きた直後は、本当に今日は休みなのだろうか、なんて不安を感じたりしながらそわそわしていた。もちろん今日は海の日だ。国民の休日なのだ。残念なことに海を感じるような過ごし方をすることはできなかったが、日中は初めて訪れる街を歩いてみたり、コーヒーを飲みながら近い将来のことを考えたりして過ごした。夕方からは大きめの本屋に行き、自分の持つ興味を放し飼いにして数時間過ごした。そこで、世界には知らないことがたくさんあるのだな、という何十回目かの気付きを得た。そしてまた“知りたがり”の性格である自分が、しかし知るための行動をあまりできていないことに気付いた。これはいかん、とエスカレーターを下りながら自省したのだった。
・・・ 炊飯器が鳴った。ここまでにしておこう。

2009.07.14 火曜日

gatan goton


gatan goton, originally uploaded by ixao_AGP.

帰りの電車、いつも西日に染められる。まだまだ新人なので、会社に残ってもすることもないからさっさと帰ることができる。だから新人は夕陽に目を細めることができるのだ。目を細めながら、ぼんやりと考えた。世界だか社会だか知らないが、ぼくが身を置いているこの場所にはいろんな人がいるのだと。
今日、両手に軍手を着け、少しからだを斜めにしながら左手に持った杖を頼りに駅構内を這い進む人を見かけた。背負ったリュックサックは背中から落ちそうになっている。力のない両脚を包むズボンは、ひたすら地面を舐め続けてひどく汚れているが、視線はただ進むべき方向を睨んでいた。
理由があって車椅子が得られないのだろうか。それとも、車椅子を拒み、自分の力で「歩む」ことを選んだのだろうか。オレンジ色の車内で、そんなことを考えていた。

2009.07.12 日曜日

新書とハードカバー


min, originally uploaded by ixao_AGP.

朝から夕方までかけて、本を2冊読んだ。せっかく晴れたこんな日に、ぼくは部屋にこもって本を読むことにしたのだった。おかげで、久しぶりに落ち着いて読書することができた。ベッドでごろごろしながら、椅子で片膝立てながら、うろうろしながら、うとうとしながら。
活字を目で追う行為は、なかなか興味深い。明らかに読む速度は一定でなく、鈍行になったり急行になったりする。難解な部分なんかは一旦立ち止まってみて、んー、ふむふむ、とブレイクタイムを入れてみる。時々、分からない部分は飛ばしてしまうこともある。面白いところはどんどん読み進めたいので、するすると紙面を視線が走りぬける。あまりにするするするすると進んでしまっているとなんだかもったいない気がしてきて、少し落ち着いてみる。たまに読み方が分からない、あるいは意味すら分からないことばが出てきたりする。そんなときは少しわくわくする。話の内容とは別に。
新書とハードカバーを一冊ずつ、ぼくの日曜日にちょうどいいらしい。

2009.07.10 金曜日

朝、幸せが欲しければ


to-nyu-, originally uploaded by ixao_AGP.

ぼくの朝はこれで始まる。
近くのスーパーでは3本セットでお得に買えるのだ。
毎朝1本これを飲むのが楽しみなのです。
無調整豆乳のほうが好きだけど、
このサイズがちょうどいいので愛飲している。
今日は金曜日。
真っ白な土日がやってくる。
たのしみたのしみ。

2009.07.08 水曜日

遠く近く響く消える

walk, originally uploaded by ixao_AGP.
駅からの帰り道、少し強い風が吹き、空には黒い雲がねっとりと流れ、その隙間から月の光が漏れていた。何も考えずに頭の中をからっぽにして、すたすたと規則正しく歩いていた。何も考えたくなかったのだ。仕事のことも、友だちのことも、恋人のことも、すべてを頭から追い出してしまいたかった。まさに無を求めていたのだと思う。目には道路を行き交う車のライトが飛び込んでくるし、耳にはアスファルトとタイヤの擦れ合うあの音が聞こえてくる。それでもぼくは確かに、何も見えてなくて、何も聞こえなくて、何も感じることなく歩いていた。ときどき、一部だけ白っぽく浮かぶ雨雲にちらりと目をやり、すぐに目を戻したりするだけだった。
そんなとき、急に高校時代の記憶が湧き上がってきた。高校の野球部の、ランニング中に出す掛け声の記憶だった。その野球部は、練習前の準備運動として30分ほどをランニングに費やしていた。今でも思う。長すぎるだろう、って。夏場の練習なんかは地獄のようで、走っている間は声を出すこと以外にいかなる体力も消耗してはいけなかった。もちろん、頭の中はからっぽだった。ただただ声を張り上げ、動かしているのか動かされているのか分からない自分の脚が交互に運動するのを感じていた。外野の向こうの森ではセミの鳴き声が響き、校舎の窓からは暇な同級生が外を眺めている。舞い上がる砂埃が汗だらけの顔や腕にまとわりつく。そんなことは気にならない。ただ、無心で走り続けた。
ランニングの掛け声というのは各野球部ごとに異なるもので、一つの特徴として見られることも多い。我が部の掛け声も、誰が考えたのかは知らないが、まあそれなりに特徴的だったように思う。そして何度となく叫んだ掛け声は喉に、耳に、脳に染み付いていて、おそらく一生忘れることはない。で、その忘れられない掛け声を久しぶりに思い出し、ぼくの頭に響き始めたのである。理由は分からないけれど、家に着くまでの時間、あのランニングを思い出していた。
何の因果か、家に着いて郵便ポストを開けると、高校の同窓会の便りが届いていた。開いてみると、ぼくの知らない校長のあいさつが載ってあった。そのすぐ下には「恩師の近況」として、野球部の副顧問だった先生のあいさつが載っていた。先生はいつの間にか違う高校へ赴任していた。そしてまた、野球部の顧問をしているらしい。文章から先生の顔が浮かび、声が浮かんだ。
急に懐かしくなり、高校のウェブサイトにアクセスしてみた。写真好きの古文の先生が更新していて、トップページは毎月新しいものに差し替えられている。この先生は図書室の管理もしていた。もう随分おじいさんで、「文字」を「もんじ」と発音するのが特徴だった。トップページには、かつて見慣れていた、しかしもう薄れ始めてしまった景色が映し出された。懐かしい感情にまみれながら、最近の行事の報告、そして部活動の紹介のページを覗いてみた。野球部のページには練習風景の写真がいくつか掲載されていた。ぼくの時代に変わったユニフォームが写っている。修理しつづけた緑のフェンス、毎日整備したグラウンド、ぼくを小突いた監督の姿。載っている写真は冬のものだった。その写真を見て、自分でも驚くほどくっきりと、冬のグラウンドの温度や匂いや地面の固さを思い出すことができる。
そう、あの頃は「ランニング」という「無心でいる時間」が毎日きちんとあった。脳を休ませ、からだを目一杯に動かす。その時間がとても大切だったのだと思う。最近は逆で、イスにどっかり座ったままで脳をフル稼働させてばかりいる。安心して何も考えずにいられることがほとんどない。それがよくないのだろう。
吐き出してみたくて書いてみたらまとまらなかった。
書くことが下手になっていくのが体感できる。
でも外に出さないと、中が淀んでしまう。
それだけはイヤなのだ。

2009.07.05 日曜日

くたびれたのだ


lupin 3rd, originally uploaded by ixao_AGP.
電車に座るぼくの前に立つ女性。右手で大き目のクリアファイルを抱えて、左手には黄色い雨傘を持っていた。その左手の甲に、カメラ、という青い文字が書かれていて、もう消えそうになっていた。先々週の日曜日だったと思う。
机の足元に撮影済みのフィルムが一本転がっていた。24枚撮りのCENTURIA。感度は100。いつのものだか記憶がない。今日は予定もなかったので、いつものように朝のうちに掃除と洗濯を終わらせてから、現像をしにでかけた。
フィルムを出したあと、本屋をうろうろ、文具店をうろうろ、街をうろうろと暇を持て余して過ごした。駅前では選挙に向けた演説が行われていた。話している人から少し離れたところで、大きなスピーカーが一生懸命に騒音を吐き出していた。額に汗を浮かべ、綺麗な笑顔を被り、スピーカーをこき使う中年男性のことばは耳に届かなかった。
一人で歩きながら、珍しいことなんだけれど、ふと誰かに会いたいと思った。誰でもよかったのかもしれない。誰かと涼しい喫茶店に入って、薄くてもいいから多目のアイスコーヒーを飲みながら、頭の中を弛緩させてくだらない話でもしたい気分だった。
「もうすぐ梅雨が終わるね。」 「そうだね。」
そんな風に頭に浮かんだことをそのままことばにしちゃって、聞いたほうも無責任に同意してみたり。本当に相手は誰でもいいんだけれど、結局、その誰でもいい相手というものが自分にはいないということを思い出して、すべては梅雨のせいだと意味不明な結論に行き着く。
現像されたフィルムは光線漏れがあったらしく、ネガの半分くらいがダメになっていた。使っていたカメラはOLYMPUSの初代PENだった。つまり古い古いカメラなのだ。そりゃあトラブルもあるだろう。
ネガを光に透かしてみる。海が見えた。海に行きたい。海に行こう。

2009.07.02 木曜日

ふとした時間に時間を感ず


if i were., originally uploaded by ixao_AGP.
6月が過ぎていった。やけに駆け足だった気がする。
ちょっと曇り空を見上げて雨を心配している間に、6月は過ぎていった。
早く寝て、早く起きる。子どもの頃に散々言いつけられた生活リズム。
あの頃はできなかったけれど、今はきちんとできている。
目が覚めた直後の、「自分」と「自分じゃない何か」を足して二で割ったような感覚。
それらがじわじわと重なり合ってぴったり一つになるのは、駅まで歩いく道すがら。
ふと立ち止まり、曇り空を見上げてみる。そんな6月が過ぎていった。