小田急線の向こう側、澄んだ青空の底に薄い月が浮かんでいた。
風に揺られたボートとボートがぶつかる音がコツコツと冬の終わりの多摩川に響いた。
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前に住んでいた街から近いこの場所は、その頃の気分を思い出させる。ボーっとしているようで、いつもモヤモヤしているようで、でも迷ってもいない感覚。会社の社員寮を入社後数ヶ月で飛び出て、自分で部屋を借りて、本当の自力での生活が始まった頃。まるで自転車に初めて乗れた時のように、ペダルを漕ぎ続ければずっと進んでいけるけど、スピードを緩めるとふらふらしてこけてしまうような、とにかく後には戻れない気分だったのだと思う。簡単に言えば不安だった。そんな時に、たまにこの辺りをカメラを持って散歩して、頭のなかを空っぽにして、平常心を取り戻していたのだった。
前に住んでいた街から近いこの場所は、その頃の気分を思い出させる。ボーっとしているようで、いつもモヤモヤしているようで、でも迷ってもいない感覚。会社の社員寮を入社後数ヶ月で飛び出て、自分で部屋を借りて、本当の自力での生活が始まった頃。まるで自転車に初めて乗れた時のように、ペダルを漕ぎ続ければずっと進んでいけるけど、スピードを緩めるとふらふらしてこけてしまうような、とにかく後には戻れない気分だったのだと思う。簡単に言えば不安だった。そんな時に、たまにこの辺りをカメラを持って散歩して、頭のなかを空っぽにして、平常心を取り戻していたのだった。