2010.07.11 日曜日

孵化する空

土曜日、梅雨の晴れ間。朝から押入れの掃除をした。ときどき自分の持っているものを点検して、要らないものは処分していく。そうしないと持ち物が把握できなくなってしまうから。今回は、姉が「もう使わないから」と送りつけてきた安物のスチームアイロンを捨てた。ぼくには普通のアイロンがあれば十分だし、単一の機能しか持たない道具というのはそこそこ良い物でなければ使っていて快適ではないものだ。たぶんあれはドンキホーテで3000円以下の代物だ。
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この日曜日は参院選の投票日。日曜日は雨が降りそうだから、という理由で土曜日に期日前投票をしてきた。昨年の衆院選は引越し時期と重なってしまい、世田谷区で投票するつもりでいたら前住所で投票しなければならないと言われたので億劫に感じて放棄してしまった。というわけで東京に来てからはじめての投票。用意されていたえんぴつの書き心地がとてもよかった。真っ黒の芯が紙との摩擦によってうっすら熱を帯びて融けながら線をひいているようだった。
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投票のあとは下北沢へ。レンタルビデオショップでDVDを3本借りた。DVDを選んでいる間、棚と棚のあいだをうろうろと歩き回る自分を含めた人間の動きが、決まったエリア内をランダムかつ永遠に歩き続けるロールプレイングゲームの町人みたいに思えた。その後、あちこちにある古本屋をいくつか回り、探していた作品の文庫版を200円で見つけた。本棚にぎっしりつまった膨大な本の背中を眺めて歩く。それだけでも楽しい。気になった本の頭に人差し指をかけてひき出し、ぱらぱらと味見をする。そしてまた元の隙間にすっとさしこんで人差し指でぐっと押し込む。その動作がまた楽しい。
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うまくやっていくことの難しさを感じる人は多いだろうか。ずる賢くないとやっていけないのだろうか。ずる賢いと感じることがおかしいのだろうか。まだ心の中の素の部分が拒絶しているのがわかる。それは甘いのだろうか、弱いのだろうか、拙いのだろうか。だけどぼくはまだ自分の反応を信じているし、失いたくない。適応することが必要なのは明白だが、そのことを表層だけにとどめられるのだろうか。どこか深いところまで染みこんでしまったら、という恐れを捨てきれないでいる。
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偏光レンズごしの空はとてもきれいだった。

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