今年もさくらが咲いた。昨年の10月まで暮らしていた街に戻り、お気に入りの川沿いでお花見。あいかわらずののんびりとした雰囲気が、この街で生活していた感覚を思い出させてくれた。 こじんまりとした幾つかの集団が川沿いに腰をおろして、土曜日の昼下がりと春のおとずれを満喫していた。少しむさくるしい感じのおじさんたちが鳴らしていたギターが小気味よく空に溶けていった。
何を考えていただろう。写真を撮りながら。たいしたことではなかったと思う。だけど生きているうち、本気で思い悩んで何かを決めるシーンってほとんど限られていて、多くの時間は何気ないことを考えて過ごしていて、でもそれが人生や自分自身をつくっているんだと思う。きっとぼくの写真もそんな感じで、何かを残そうとか表現しようとか、シャッターをきる瞬間はそういうことは考えていないはずだ。だけどその風景は写真に残っていて、ぼくはぼくの感覚を表現している。