2009.11.23 月曜日

本と翅

古本屋の本棚を左から右へと視線を走らせる。
一冊の背表紙に目が止まる。
蚊が留まっている。
著者名の上にじっとしている。
その腹に血は溜まっておらずからだは小さい。

この時期に蚊か。
さぞ生き辛かろうと思い遣る。
夏の日にさんざん憎んだことも忘れて。

少し目線を右に切る。
そしてすぐに戻す。
すでに蚊はいなかった。
さようなら、と思った。

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