2009.05.17 日曜日

さようなら、のそのあとで


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学生の頃、街の人々が駅に向かう時間に街に出たくなることがたまにあって、21時くらいに地下鉄に乗っていき、終電で帰ってくるなんてことをしていた。別に何をするわけでもなく、ただ人気の薄れていく繁華街に身をおいて、目の前を通り過ぎていく人々と時間を眺めていた。

騒がしい夜の街は、一人でひた歩く人間にとっては、実に静かなものだ。自分に向かって発せられる音など皆無で、すべての音がからだをすり抜けて、自分以外の誰かに吸い込まれていく。鼓膜は震えているのかもしれないけれど、その震えは何の感情も生み出さない。まったくもって静かな世界なのだ。その静けさが大好きだった。

東京に来て、初めて同じことをした。土曜日の夜、まるで永久機関のように人を捌き続けるスクランブル交差点を眺め、また歩き、途中で立ち止まったり。人の声、足音、音楽、車のエンジン音、電車の音。すべてがからだをすり抜けていった。ただ、光だけがひどく煩かった。

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