雨の中をずーっと歩いていた
梅雨を思い出した
今年の梅雨をどんな気持ちで過ごすのだろう
ジメジメしたって構わないから
どうか安らかでいてください
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結構しっかりと雨が降る中を、小さめの折り畳み傘を差して歩く。
左肩と、左肩から斜めに掛けたバッグが濡れる。
そんな状態で30分くらい、線路沿いを歩き続けた。
ふと、僕は絶望感を抱いた。それも”前向き”な絶望感。
例えば君がオレンジをどうしても食べたいと願っているとする。
だけど、どの店を探してもオレンジは見つからない。
探している間にもオレンジへの想いは募るばかり。
とうとう手ぶらで家に帰らざるを得なくなった君が抱くもの、これが絶望感。
君は悲劇のヒロイン。
僕の場合は違う。
オレンジが食べたい、という建前。
建前のために必死にオレンジを探す。しかし見つからない。
このあたりから建前を疑いにかかる。
本当にオレンジ?ミカンじゃないの?って。
ミカンかもしれないね、ってズレた僕の影が呟く。
でもオレンジという建前は崩しちゃいけないらしいよ、一般的に、とも呟く。
一応同意するんだけど、オレンジがないという事実は覆らない。
だから僕は絶望を抱いて帰宅する。
明日はミカンにしようって。
駅が見える。
線路は続かなかった。