ピンボケなんて怖くない?
じゃあなんでこの写真を気に掛けるんだい?
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あまりにもやる気のない僕の写真を
やる気に満ちた店長の手から受け取った
普段乗らない路線の車両のドアにもたれながら
なんとまぁ自分という人間は出来が悪いのだろうと静かに嘆いた
少し離れた席で二人分くらいの幅を占有している脚を閉ざせない悪癖のオッサンを見て
ああはなりたくないけれどあれはあれで幸せに生きている生命体なのだ、と思いまた嘆く
バイト先の社長が0.9mmのシャープペンシルを手にして
肌色とオレンジ色の中間の色をした小さなメモ帳を開き
横軸に時間、縦軸に濃度をとったグラフをラフに描いた
彼の話はグラフのように波打ちながら彼の卒業論文の話題へと移る
『要はテクニカラーでさ・・・200年はもつって言われて・・・』
難しかったけど楽しかった
最後に彼は戸棚の奥から綺麗ではない大きな箱を取り出した
『8×10だ』
初めて見たその図体のでかい怪物に惚れ惚れしていると
怪物がかつて写し取った写真を見せてくれた
もう、写真が好きで仕方なくなった